導入事例5/東京・大井町イタリアン「オステリア トゥット ソーレ」様


取材先 : Osteria Tutto Sole (オステリア トゥット ソーレ)
ご担当者 : シェフ 進藤 純弘 様

困ったな。このほや美味しいぞ

僕は北海道(釧路)の出身で、ほやは子供のころから普通に食卓に並ぶ食材でした。最初の出会いは小学生の頃ですが、衝撃的で理解できないというか、それまでの人生経験にない味覚でした。成人して味覚も整ってから、その場で捌いた刺身を食べてごらん、と出された時に「なんだこれ、すごい」と改めてびっくりし、母からは東京ではそんなものは食べられないよ、と言われていました。

獲れたての味を知っていて、鮮度ありきなものとわかっていますから、今回「鮮冷ほや刺身」を食べるまで、正直ほやは東京で無理をして食べるものではないと思っていたんです。ご紹介いただいて試食した時も、最初は疑っていて、俗にいう生臭さも多少あるだろうと思っていたのですが、食べてみたらこれがあまりにも美味しい。思っていたよりも旨みがあり、気になる臭いは全くなくて、逆に困ってしまいました。「あれ、なんかこれ美味しいぞ」と。

北海道のほやは赤ほやと呼ばれます。「鮮冷ほや刺身」は三陸なので真ほやで、見た目は凸凹しているかどうかの違いです。赤ほやの方が少し磯の風味が強く、例えばトマトなどと合わせたら喧嘩してしまいそうなのですが、真ほやはバランスがとれていて、やさしく力強い旨みがすごいです。お客様にも試食していただいたんですが、「ほやの概念を覆された」という方もいらっしゃいました。

ほやを「西洋料理」で使うならイタリアンが最適

海を目の前に育ち、母は和食の料理人だったので、美味しいものを美味しいままに食べることは当たり前で、僕の味覚の本質はそこにあるのだと思います。北イタリアのピエモンテに留学している時も、ふだん意識したこともない人参の味がしっかり濃いことに驚き、素材の大切さを感じました。今は流通が良くなっているので、当たり前のようにとれたての魚や野菜が入ってきますし、野菜もどんどん美味しくなっている。でもそれは当たり前のことではありません。生産者の方のことも思うと、僕たちがすべきことは何だろうと考えます。ならば生でそのまま食べればいいだろうということではなく、なるべく素材の味や甘味を引き出すように加工する。それがイタリアンだと僕は考えています。

ほやには特別な旨みがあります。でもそれは強すぎず、他の食材とも手をつなぐことができるし、一人でも立てる。だから周りを少し固めてあげるだけでいいです。何かと合わせてソースをかけて、といった形ではもったいない。シンプルな調理法が合います。素材を活かす調理といえば、やっぱりイタリアン。日本料理は別として、西洋料理でほやを使うなら、イタリアンがいちばん合うと思います。

今、海外でも日本の素材は高く評価されていて、三ツ星レストランでも昆布を使ったりもしていますし、日本の食材を使うことはひとつのステータスになっています。日本料理が広く美味しい、素晴らしいと言われるのは、やはりそうした優れた素材を活かしているからだと思います。

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「1+1=2」では意味がない。素材の相乗効果が産みだすプラスアルファ